"HIKARI"


ピンクの目立つ文字でそう書かれている看板。


ここは、キャバクラ。


中に入れば、派手な化粧と洋服を纏った若いキャバ嬢が沢山だ。


キャバクラで働く16歳


本名、小坂愛理(こさか あいり)


源氏名は葵(あおい)


彼女は容姿端麗でとても未成年とは思えないほどの色気を持っている。


誰もが羨むその美貌は、キャバクラに来たお客さんにも大人気。常に店のランキングでは堂々の1位を誇る。



「葵ちゃんご指名入りました〜!」


キャバ嬢の控え室の扉の向こうから、さほど声の低くない男の人の声が聞こえてきた。


扉を開けて入ってきたのは、白い長袖のワイシャツに黒いベスト、ラメの黄色いネクタイを閉めている男の人。


髪の毛をしっかりワックスで固め、高級感を漂わせているのは、このキャバクラの支配人。


その支配人の大きな声に、控え室にいたキャバ嬢達は噂をする程度の小声で何かを言い出した。


"また呼ばれてる。最近あの子ばっかりね"


"ここに来てからすごい人気だし"


"本当は未成年なのに20歳って偽ってるんだって"


"嘘!?それ社長とかにバレたら処分でしょ?"


"支配人も未成年って知ってるのにこんな可愛い子は勿体ないって雇ってるらしいわ"


あちこちから様々な声が私の耳に入ってくる。


それでも私は聞こえていない振りをして、鏡に向かって化粧を続ける手を止めなかった。


「今いきま〜す」


私はワインレッドのドレスをなびかせ、化粧ポーチとヘアアイロンをささっと片付けて男の人がいる扉へと向かう。



この一つの部屋に5人ほどいる女性をかき分け、私はヒールを靡かせながら歩いた。