もう芭瑠くんはわたしのことなんて忘れちゃったのかな……。
所詮、子どもの頃に交わした口約束なんて守られるわけないのに。
「芭瑠くんに……会いたい、な」
部屋にある窓をガラッと開けると、春の心地いい風が吹き込んでくる。
10年経った今わたしは高校3年生になった。
今は春休み中なので、正式にはあと5日後にある始業式を迎えれば無事に3年生に進級する。
そして今日、桜が満開の4月2日は
わたしの18歳の誕生日。
誕生日だからといって、これといって変わったことはないし、高校生にもなればそんな盛大にお祝いされることもないし。
いつもどおりの生活を送って、
これからも平凡に過ごしていくんだろうなぁと思いながら、お母さんがいるであろうリビングに向かった。
「あら、芙結おはよ〜!」
「おはよ」
いつもと変わらずお母さんがキッチンに立って忙しく朝ごはんの準備をしていた。

