小さい頃の芭瑠くんを想う気持ちは高校生になった今でもずっと変わらずにいる。
それくらい、わたしにとっては大切な人で、今も胸に残り続ける初恋の人。
芭瑠くんがいなくなってしまった桜の季節になると、毎年近所にある大きな桜の木を見にいく。
もしかして、ふと芭瑠くんがわたしの前に現れてくれるんじゃないかって。
あの頃と変わらない、優しい笑顔で笑ってくれるんじゃないかって。
でも、それはいつしか淡い期待にしかすぎなくなってしまって。
昔誰かに言われたことがある。
初恋は叶わない……。
今、芭瑠くんがどこにいて何をしているのか全く知らない。
芭瑠くんがいた頃に通っていたお屋敷も、いつしか誰も住んでいる様子がなくなってしまった。
ただ、門の外から見える花壇の花たちは、今でも10年前と変わらず手入れが行き届いていて、綺麗に花を咲かせている。

