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とても懐かしい夢を見ていた。
小さい頃の、わたしの王子様の夢。
桜の木で交わした約束も、芭瑠くんの笑顔も。
ぜんぶ今のわたしの胸の中と、記憶に残っている。
もう、あれから10年が過ぎた。
たまにこの夢をふとしたときによく見る。
ただ10年も経てば、記憶は少しずつ曖昧なものになっていってしまうので、覚えているのは芭瑠くんの顔だけ。
あと、今もまだ大切に取ってある、芭瑠くんと出会った形として唯一残されているガラスで作られた桜のネックレス。
今のわたしには、これくらいしか芭瑠くんとの繋がりは何もない。
いつもいつも、必ずこのネックレスをするのが習慣になって、これをつけていたら、ぜったい芭瑠くんを忘れることはない。
それに……もし、芭瑠くんがあの頃の約束を覚えていたら、わたしのことを迎えに来てくれるかもしれないなんて。
このことを周りにいる友達に話したって、そんなおとぎ話みたいな展開ありえないって否定されてばかり。

