まさかこの時、芭瑠くんがパタリとわたしのそばから消えてしまうなんて思ってもいなくて。


ザザッと風が吹くと、桜の花びらがその風に乗るようにわたしたちの周りは桜色で包み込まれて。

芭瑠くんは、ふわりと笑いながら……。


『僕は……芙結が好きだよ』

そう言って、わたしの頬にチュッとキスをした。


『芙結は、ずっと僕の。
ぜったい他のやつには渡さない』



幼い頃に芽生えた小さな恋心。

きっと、大人から見ればこんな小さな子どもの告白なんて可愛いものだと思われるくらいで。


大きくなれば、その小さな恋はいつか淡い思い出となって消えてしまうって……。


『わたし、も……芭瑠くんのこと大好きだよっ』


ただ、その頃のわたしからしてみればそれは初恋で、いつまでも胸の中に残り続けると、幼いながらにそう思った。