たぶん……お母さんだと思うけど。
いつもノックなんかせずに入ってくるから、改まってどうしたんだろうって思う。
何も返事をしないでいると、扉の外から
「芙結?ちょっと入ってもいい?」
やっぱりお母さんの声で、
そのままゆっくり扉が開いた。
部屋の中は真っ暗なので、部屋の外の明かりが入ってきて入り口だけ明るい。
「急にごめんなさいね」
「……ううん、大丈夫」
身体をベッドから起こして話を聞く。
「今ね、外に柏葉さんがいらっしゃってるの」
予想外の人の名前がお母さんの口から出てきて、正直驚いた。
「いま……来てる、の?」
「えぇ。芙結に会いたいってわざわざ来てくださってるみたいなの」
いったい何をしに……?
「用件は聞いてないけど、芙結が会える状態なら会いたいって。ただ、無理にとは言わないって」
柏葉さんが来るということは、もちろん芭瑠くんのことについてだと思う。