ハッとして目が覚めてソファから飛び起きた。
だ、誰か来てる。
急いで出なきゃと思い、ふらつく足取りで誰か確認せずに扉を開けてしまった。
「は、はい……どちら様……」
開けて数秒言葉を失って固まる。
え……な、なにこの怪しい人……!!
玄関先に立つ、黒のスーツをピシッと着こなして、サラッとした黒髪の男の人。
おそらく外見から歳は30代くらい。
何かの勧誘か、営業マンかと思ったけれど、どこか品のある雰囲気からそういう感じには見えない。
するとわたしの姿を見て、にこっと優しそうに笑いながら落ち着いた声音で言った。
「こんにちは、芙結さま」
ふ、芙結さま??
な、なんでわたしの名前知ってるの??
少なくともわたしはこの人に会ったことはないと思うし、今日が初対面のはずなのに。
えっ、まさか新手の誘拐手口とか!?
もう誘拐する子の名前なんて把握済みですみたいな!?

