灰色の雲に覆われた空から降り出した、大粒の雨。


外はどんよりと薄暗く、気分の良い朝とは程遠い。


ダンスのレッスンを終えた私は、気分をあげようと私室にて読書を楽しんでいた。


「…………あら、もう終わっちゃった」


空いた時間に読み進めていた本は、遂に最後まで読み終わってしまった。


長編なだけに、読み終わってしまうと何だか寂しく。


こうなると、また新しい本が読みたくなる。


「図書室へ行こうかな…」


何度か行ったが、王城内の図書室は見渡す程に広く、様々な興味深い本が置いてある。


本好きにとって、その図書室はまさに本の宝庫。


帝国に置いてない様なものまで置いてあるので、暇な時間を過ごす時には丁度良い。


「行かれるのでしたら、準備致します」


クランベルは先程の言葉に反応して、待機していた侍女へ声をかける。


「支度が整いました」


支度の済んだクランベルを連れて、何度か歩いた図書室への道なり(廊下)を進む。


向かいから上質な服に身を包んだ小太りの男性が二人、歩いて来た。


「王国の月、王妃様」

「王妃様、ご機嫌麗しゅうございます」


大臣達の反応は様々で。


様子を伺う様に恐る恐る挨拶をする者もいれば、公爵の様に表では笑顔を取り繕いながらも、嫌な
空気を漂わせてくる者も中にはいた。


適当に大臣等との会話を済ませると、再び足を図書室へ向けて歩く。


「ここから先は王妃様のみ入場を許可いたします。お付きの者は外でお待ちを」


着いた先は王族や許された貴族しか中に入る事を許されない、特別な図書室。


王城内には二つ図書室が存在するが、その中でもこの図書室は重要書類や王族のみ閲覧が許されている書物も多くある為、厳しく規制されている。


いつものようにクランベルを外で待機させて、室内へ入る。


大体、私の向かう書架は決まっており、

奥の方に存在するロマンス小説の置かれた書架だ。


ロマンス小説は貴族の間では下賤な読み物とされ世間的には受け入れ難いが、


私は好きで良く読んでいる。


何故こんな場所にロマンス小説が置いてあるのか不思議ではあったけれど、


きっと、昔の王族の方が偶々読んでいたのだろう。