「……まぁ!そのお方とは、まさか王妃様ですか?」

「淑女の手本すらならない方だ。その口調からは品位すら感じない」

「まぁ、何と言う事…!」


その言葉にルティアンは面白おかしく、クスクスと笑う。


「そのお方は側妻。わたくしが正妻になりましたら、その際は指導差し上げましょう。あぁ…………早く王様の妃になりたい」


うっとりとしたその瞳は、夢を見るかのよう。


「お父様。わたくしに、『王妃になる器がある』と仰られましたが、本当でございますか?」


「あぁ。お前には王妃……いや、国の母となる器がある。神より王様のお側付に選ばれた人間こそお前なのだ。何しろ、その容姿がそれを証明している」


そう言って、腰まで伸びた赤い髪の毛に視線を向ける。


「王女リティ様は赤い髪の毛をなさっていた。聖なる力を持ち、国を導いた。お前は王女様と同じ赤い髪の毛をしている。お前こそが王女様の生まれ変わりだ!」


発せられる言葉には、力がこもっている。


「……相変わらずお父様は、お言葉がお上手ですわね!正直聖女には興味ありませんが、わたくしは何としても王様と結婚がしたいわ」


「案ずるな。話は着々と進んでおる。お前が妃として城入りする日も、そう遠くはない」


その言葉を聞いてルティアンは、嬉しそうに目を細めて微笑んだ。


王様と結婚する日もそう遠くない…と。


「では、お父様。また後ほどお会い致しましょう」

「あぁ」


ルティアンは優雅にお辞儀をすると、世話役の使用人と共にその場を立ち去って行った。


その後ろ姿を眺めながら、ポツリと呟く。


「…………私の野望を、お前が代わりに叶えるのだ」


___…と。