「……………………」


(……あれ?)


何故か、その言葉に固まるテオビューク卿。


瞬きを繰り返すだけで、他の動きは停止している。


(まさか…………っ!)


テオビューク卿の機嫌を損ねたのかもしれない。


それか今の言葉で、引かれてしまったのかも。


(嬉しくない…………よね。分かってはいたけど…)


何だか、少しだけ悲しくなる。


「………中へ戻りましょうか。それと、罰は与えません。守ってくれたのですから」


固まったままのテオビューク卿の横を通り過ぎる。


「………それと。助けてくれて、ありがとうございます。テオビューク卿」


「………………っ」


「お礼が遅れましたね」


軽くテオビューク卿の方を振り返る。


けれど、直ぐに前へ向き直し歩き出す。


これ以上、護衛騎士から引かれたくないし。


「クランベル。行こう」

「かしこまりました」


クランベルは、速さに合わせる様に後ろからついて来る。


テオビューク卿は、まだそのままなのか。


背を向けた後は、シーンとしている。


「お妃様……………っ!」


大きな声で立ち止まる。


後を振り返るとテオビューク卿は跪くことを止め、立ち上がっていた。


「例え騎士副団長様であれど、その距離からお妃様を呼び止められるとは、無礼でございますよ!!」


クランベルが眉間にシワを寄せて注意すると、


その言葉にハッとしたテオビューク卿は、駆け寄ってきた。


「どうかされたの?」


急に目の前で跪くテオビューク卿に思わず驚く。


「私はお妃様の護衛騎士でございます。お供致します」


胸元に手を当て、深々と頭を下げる。


良くわからないけれど。


「えぇ。お願いします」


(立ち直ったのかな)


でも、何故いきなり?


疑問はあったけれど、テオビューク卿が元気そうなので、取りあえず良しとした。