けれど、ケレイブ様は。


ケレイブ様だけは。


『君の髪は素敵だね』って。


『月の光に当たって輝くその髪は、宝石の様に美しい』と言ってくれた。


瞳も色も、そう。


『お菓子みたいで美味しそう』と、優しく笑ってくれた。


何気なく口にした言葉だったかもしれないけれど、私はあの言葉がきっかけで気にしなくなった。


(最悪な人だったけれど………)


感謝はしている。


(……………………一応)


だからテオビューク卿も、その様に気を落とさなくても大丈夫だと思う。


誰かの一言で、気にしなくなる事もあるから。


それに、その傷は。


「勲章じゃないですか」

「………と、申されますと?」

「え、だって……。その目の傷は仕事中に出来た傷ですよね?」


「そう……ですが」


どこか戸惑う様な、テオビューク卿。


「誰かを守る為、もしくは目的を果たす為に出来た傷でしたら、どうしてその様な表情をなさるのですか?」


何となく聞いてみる。


「………皆、この傷を見て不快な気持ちになられるので」


(傷を見て不快に?)


顔は強面だけれど。


「頑張った証みたいで、私はカッコイイと思いますけど?」


そう、まるで勲章の様で。


勇ましくて素敵だと思う。


(私に言われても嬉しくないと思うけど……)


「だから、私の前では気にしないで大丈夫よ。怯えもしないし、嫌がったりもしない」