「……………あれ?でも、そんなドラゴン使いの人達が騒がしいのは何かあったからなのかな?」


「天気も宜しくないですし……王様一行が視察の為にドラゴンを連れて行ってますから。それで、残されたドラゴンにも影響が出てしまったのかもしれませんね」


「些細な生き物なのね。ドラゴンって」


そんなドラゴン使いの人達は慌てた様子で角を曲がり、視界から姿を消した。


「時期に雨が振りそうね。散歩はこの辺で、そろそろ中へ戻りましょう」


雲行きの怪しい空を見て、室内へ戻ろうとしていたその時。


「…………………おや?これはこれは!今、噂のお妃様ではございませんか」


ひと目で貴族と分かる上質な服に身を包んだ黒ひげの男性が、顔に笑みを浮かべて、向かいから歩いてきた。


「呑気に庭園を散歩ですかな?」


誰か分からずに戸惑う私へ、クランベルは後ろから耳打ちをする。


「…………あのお方は、王家と古くから親交を持つベルデーク公爵様でいらっしゃいます」


(ベルデーク公爵様………)


王家と古くから関わりあるお方であれば、私も親交を持たなくてはいけない気もするけれど。


先程、見てしまった。


口元だけで、目が笑っていなかったとこを。


「ベルデーク公爵閣下とは、結婚発表以来でしょうか。…それで、その噂のとは一体どの様なものですか?」


にこやかに話しかける。


「おや、ご存知でない?いや〜、当事者の耳には中々伝わらないとは言いますが、本当の様ですね」


可笑しそうに大きな声で笑うベルデーク公爵。


笑い疲れたのか。


次の瞬間、表情がガラリと変わった。


「…………貴女様は、一体何処から湧き上がったのですか?」


影のある笑みに、思わず後退りする。


「勧めても妃候補を頑なに拒否し、向かい入れないあの王が、風の吹き回しでどの様な妃を向かい入れたかと思えば…」


上から下をまで回すように見たベルデーク公爵は馬鹿にするように鼻で浅笑う。


「一体、どの様な汚い真似を使われたのか…」

「ベルデーク公爵様…っ!!」


その言葉に、ついに我慢の出来なかったクランベルが声を上げる。



「使用人ごときが…………この私に楯突くと言うのか」

「相手はお妃様でいらっしゃいます。公爵様でしょうと礼儀を弁えて下さいませ」

「何だと……………っ!!?」