空一面を雲が覆い隠すどんよりとした空は、今にも雨が降り出しそう。


クランベルを連れて庭園を散歩していた私は、ふと感じた周りの泡立たしさに足を止めた。


「今日は、何だか騒がしいね」


たまに庭園を散歩する事はあるけれど、いつもは大抵穏やかで。


数人、見かける程度。


けれど、今日はいつもは見かけない服装をした男性達が、慌てた様子でどこかへ走り去って行く。



「彼等は何の人達なの?」

「ドラゴン使いと言われる人達です」

「ドラゴン使い?」


私の質問に、クランベルは平然と答える。


「この国が、ドラゴンを保有している事については既にご存知ですね?」


「えぇ。歴史の勉強である程度は習ったけれど……」


正直、あの王様が帝国へ来られるまでドラゴンは物語だけの架空の存在だと思っていた。


けれど、ドラゴンは架空の存在ではなく、実在している生物で。


この国ではドラゴンがいる事が、当たり前。


「ドラゴン使いは、主に何をするの?」


「ドラゴンと言う生物は警戒心が非常に強く、時には乱暴な為、誰でも扱えると言う生き物ではありません。わたくし達王国民は、世では竜人などと呼ばれていますが、誰もが扱える訳ではないのです。

ドラゴン使いの方々は、体内を巡る竜の血が濃いと言われ、ドラゴンの扱いに非常に長けた者達でございます。あの者達が王城で保有する貴重なドラゴンの管理を任されているのです」


「そうなんだ」


誰でも簡単に扱える訳ではないそんなドラゴンの管理を任されているドラゴン使いの方達は、とても凄い人達に思える。


「そう言えば、王様はドラゴンの扱いに慣れていらっしゃったけれど……」


ドラゴンの背中へ乗った日の事を思い出し、口を開く。


「この国の王様ですから。それに王族は特に竜に近い存在と言われております。代々、受け継がれる専属のドラゴンは、かなり長生きだそうですよ」


「ドラゴンって、寿命が長いのね…!」


「百年以上は生き続けるようです。国が保有するドラゴンの扱いを許されているのは、竜の血を濃く継ぐ王族を始め、騎士、ドラゴン使いだけの様ですので、くれぐれもお気をつけ下さい。お妃様は既に王族ではございますが、竜の血を継いでおりませんので……」


クランベルは少しだけ、困ったような表情を見せた。


けれど私は全然気にしていない。


むしろ感動していた。



(……ドラゴンの背中に乗るって、やはりとても貴重な事だったのね!)


あれは竜の血を継ぐ王様と一緒だったから、乗れた事で。


私一人では不可能な事。


思わず心の中で王様に感謝する。