「言っておくが……あの者はスレンスト帝国の人間ではあるが、奴らの様な卑劣な人間ではない」
「仰っている事の意味が、分かりかねます」
伝わらないルークスに、頭を抱える。
どうしたらルークスに伝わるのか。
ルークスの帝国嫌いは知っているが。
あの者は違うと、知ってほしい。
しかし、伝わらない。
(今回の様に城を空ける事は、今後もある)
仮にルークスがあの者の事を理解し、又は支えになってくれたら。
王城を空けている間、まだ安心出来るのだが。
今の様な現状では、到底難しいのか。
(………ルークスは理由なしに人を嫌う様な者ではないのだが)
ふと、脳裏に浮かび上がったのはリティ様のお姿。
「………………そうか」
人を嫌いになるには、誰しも理由があるから。
では、理由が変われば。
思っていた相手と違っていれば。
ルークスは嫌いにはなれないはずだ。
「ルークス」
「…はい。何でございましょう」
「妃を頼む」
「わたくしに、何故その様な事を申されるのですか」
「お前は執事だ。それも筆頭執事。侍女もいるが城の中を良く知っているのは余の次にお前だ」
「そうでございますが……」
「では、問題ないな」
「………何の事でしょうか?」
「妃とは毎日顔を合わせる様に。気にかけろとは言わないが、一日三回は話せ」
「な………っ、何を申されるのでしょうか…っ!?」
何を驚いている。
別に難しくない事だ。
一日三回。
朝昼夜。
三回は顔を出し、世間話でも何でもすれば良いだけだ。