冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】




スレンスト帝国では、騎士などついた事がなかったから。


驚かずにはいられなかった。


それも、王様が一日居られないだけで。


「入れ」


王様がドアの外に向かって言葉をかける。


「失礼致します」


ドアを開け中へ入って来たのは、オレンジ色の髪をした背の高い男性騎士。


目元には直線の切り傷があり、鋭い目つきは獲物を狙う獣の様。


「私は、第一騎士団副団長のルクセア・ゲル・テオビュークと申します。お妃様にご挨拶申し上げます」


(だ、第一騎士団の副団長………っ!?)


「お………王様……っ!」

「そなたが気に入れば、今後もこの騎士に護衛を任せようと思うのだが」


気に入るも何も。


流石に第一騎士団は不味いのではないだろうか。


しかも、副団長。


こういった人材は王様の護衛に回すべきなのに。


一体、何をお考えなのだろうか。


(人質を簡単には失いたくないから…?)


人質と言っても、私はスレンスト帝国にとっていなくても良いどうでも良い存在。


命の危険に合おうが、脅そうが。


私の為に動く事はない。


それだけは自信を持って言える。