スレンスト帝国では、騎士などついた事がなかったから。
驚かずにはいられなかった。
それも、王様が一日居られないだけで。
「入れ」
王様がドアの外に向かって言葉をかける。
「失礼致します」
ドアを開け中へ入って来たのは、オレンジ色の髪をした背の高い男性騎士。
目元には直線の切り傷があり、鋭い目つきは獲物を狙う獣の様。
「私は、第一騎士団副団長のルクセア・ゲル・テオビュークと申します。お妃様にご挨拶申し上げます」
(だ、第一騎士団の副団長………っ!?)
「お………王様……っ!」
「そなたが気に入れば、今後もこの騎士に護衛を任せようと思うのだが」
気に入るも何も。
流石に第一騎士団は不味いのではないだろうか。
しかも、副団長。
こういった人材は王様の護衛に回すべきなのに。
一体、何をお考えなのだろうか。
(人質を簡単には失いたくないから…?)
人質と言っても、私はスレンスト帝国にとっていなくても良いどうでも良い存在。
命の危険に合おうが、脅そうが。
私の為に動く事はない。
それだけは自信を持って言える。



