「王国の太陽、国王陛下。ご挨拶が遅れた事をお詫び申し上げます」
「…良い。面(おもて)を上げよ」
ゆっくりと顔を上げる。
目の前の王様は、いつもと変わりなく見える。
(さっきのは何だったんだろう…?)
「噂の事は聞いたか?」
「噂………ですか。私は存じておりません」
噂されていると言う事は侍女から聞いた。
けれど、知っているのはそれだけ。
詳しい内容は知らない。
王様が噂についてお聞きになられたと言う事は、既に内容をご存知の様だ。
「……そうか。なら良い」
もしかして噂の事で、ここへ来たのだろうか。
と言うか、そもそ王様は噂で動かされる様なお人なのだろうか。
(そうは見えないけれど…………)
「そなたは何も気にする事はない」
そう言われれば言われるほど、人というものは気になってしまうもの。
けれど、王様がそう仰るのであれば。
気にしない方が良いのだろう。



