冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】




「王国の太陽、国王陛下。ご挨拶が遅れた事をお詫び申し上げます」

「…良い。面(おもて)を上げよ」


ゆっくりと顔を上げる。


目の前の王様は、いつもと変わりなく見える。


(さっきのは何だったんだろう…?)


「噂の事は聞いたか?」

「噂………ですか。私は存じておりません」


噂されていると言う事は侍女から聞いた。


けれど、知っているのはそれだけ。


詳しい内容は知らない。


王様が噂についてお聞きになられたと言う事は、既に内容をご存知の様だ。


「……そうか。なら良い」


もしかして噂の事で、ここへ来たのだろうか。


と言うか、そもそ王様は噂で動かされる様なお人なのだろうか。


(そうは見えないけれど…………)


「そなたは何も気にする事はない」


そう言われれば言われるほど、人というものは気になってしまうもの。


けれど、王様がそう仰るのであれば。


気にしない方が良いのだろう。