冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】




(どうしよう…………。早くお辞儀しないと、不敬罪になるかも…)


近距離過ぎて、息が間近に感じる。


身動きが取れずに焦っていると、次は前から手が伸びて来た。


「…………お、王様………?」


その手は私の髪へ優しく触れる。


まるで割れ物を触るかのように。


訳が分からずに王様へ視線を向けるが、私の髪を見つめたまま何の反応もない。


(…………………困ったな)


呼びかけても反応がないし。


それよりも、この状態は一体いつまで続くのだろう。


そもそも、王様は何故この場に来られたのだろうか。


何の連絡も受け取っていないけれど。


「…王様」


もう一度、呼びかける。


「………………あぁ…。すまなかった」


我に返った王様は髪から手を離すと、後ろに下がり私から少し距離をとった。


スペースが取れた事により、やっとお辞儀が出来る。