「王様は今夜もお見えになられせんね……」
慌ただしい一日を終え、ベッドへ入る頃。
私に向かって侍女の一人が寂しげに呟く。
勝手に帝国へ乗り込み、勝手に妻へと要求して私を連れて来た王様。
そう言えば、婚儀以来その姿をお目にしていない。
普通なら"寂しい"とか、"切ない"とか思うのかもしれないけれど、私は何とも思っていない。
結婚が政治的なものだったからか。
愛のない結婚だったからか。
「王様もお忙しいのでしょう」
「しかし……!その行動のせいで、最近お妃様が周りから何と噂されているかご存じですか……っ!?」
(噂……?)
「こら!お止めなさい」
余計な事を私に伝えたと言わんばかりに、クランベルはその侍女を咎めた。
王様の訪問がない事で、周りから噂されている。
それは内容的にも、妃としての威厳的にも良くない事なのだろう。
けれど、私には関係ない。
妃だの、威厳だの。
この間まで忘れられた皇女だった私が、いきなり威厳のある妃になれと言う方が無理な話だ。
そもそも自ら望んだわけでなく、連れて来られたのだから。



