ドアの前で警備する騎士に一声かけると、ノックをして中へ入る。
「失礼致します」
机の上に積まれた資料に囲まれた王様が、こちらに視線を向ける。
問題が起きたにしては、不穏な気は感じられず。
その姿はいつも通りに見えた。
「来たか」
「今回はどうされたのですか?」
こうして自ら執務室へ呼び出される日に限って、面倒事を押し付けられる事が多い。
新政策に批判的な貴族への説得を任せられたり。
王様に想いを寄せる他国の姫へ、丁重にお断りを入れたり。
後はあれだ。
大体、王様へ向けられる批判の声や不満は宰相である俺に集まる。
この役職も面倒なものだと、つくづく思う。