「これから余の妃となる者に、お粗末な部屋で生活させれぬからな」


何故、この部屋を与えたのか意味が分かった。


確かに一国の王の妃が、お粗末な部屋で暮らしていると仮に噂でもされたら、王様の沽券に関わる。


だから、一介の妃にも良い部屋をお与えになったのか。


「後で使用人を寄こす。好きに使うと良い」
「ご厚意に感謝致します」


感謝して頭を下げたが、別に使用人には期待しない。


変に期待してしまうと、後で余計に辛くなるから。


全て一人でするくらいの気持ちでいなくては。



「では、余は執務室へ戻るが、娶った事をまだ皆に知らせていない。それまで部屋で待機する様に」

「かしこまりました」


それだけ最後に伝えると、王様はマントを翻して部屋から出て行った。


(慈悲の心を持たない非情で冷徹な王……。それが私の聞いたあの方なのに、どうしてだろう)


近くにあったソファーに腰をおろす。


(使用人でさえ手をかけると聞いたのに、私はあの方をそれ程まで恐ろしいと感じない……。何故かも分からない)


徐々に瞼が閉じていく。


緊張の糸が解けたのか。急激に睡魔が襲ってくる。


(恐ろしい人……?それとも_____………)