前世の記憶を思い出したのは、事故でも何でもない。


カイルーク・ゼル・メセス・アデリカルとしてこの世に生まれた時からだった。


心は出来上がっているのに、体は未熟。


再び始まる姫様のいない日々。


それは、とても耐え難いものだった。


しかし、参加したパーティーで偶然にも姫様の生まれ変わりとされる少女と出会った。


色褪せていた世界が、急に色付いていく感覚。


覚えていなくてもいいから、彼女と話をしたい。


だが、隣には仲良さげな男の姿。


幸せそうな笑顔に、この身を引いたのに。


隠密から知らされた情報に、思わず抑え難い強烈な怒りを感じた。


婚約を破棄されプライドを傷つけられたからと、皇帝へ直訴だと。


しかも、あたかも向こうが悪い様に話を偽造。


馬鹿にも程がある。


しかも、有りもしない罪を仕立て上げられ、危機に晒されているなど。