「………やはり、憶えているのは俺だけ……か」


独り言の様にポツリと呟かれたその声はとても悲しげで。


私を見つめる瞳はどこか憂いに満ちていた。


「…如何なさいましたでしょうか?」


先程の言葉は私にしか聞こえていないみたいで、宰相様はご様子の可笑しい王様へ声をかける。


「………一つ用を思い出した」


ゆっくりと口を開くその王様は、始めに見たあの姿に戻っていた。


「何で…ございましょう?」


宰相様は恐る恐る聞き返す。


「そなたらにとっても、決して悪い話ではない」


王様はそう口にされると、意味ありげに含み笑いをした。