「ギュルァァア…ッ…!」


荒い息遣いを間近に感じる。


ドラゴンは直ぐ側まで来ている。


(やっぱり、食べられるのかな……………)


死にたくないと願ったところで、特別な力も何もない私にはどうにも出来ない。


(………嫌だな)


思わず目に涙が滲む。


私はもう、終わりなんだ。


覚悟をして、瞼をギュ…ッと閉じた。













______……だが。


「………………ん…?」


可笑しい事に何も起きない。


………いや、起きてはいるのだと思う。


けれど、直接身に何か危険な事が起きたという訳ではなさそうだ。


(硬い…?)


肌に当たる硬くてザラザラした可笑しな感触。


けれど、温かくて冷えた身体が温まっていく謎の感覚もする。


恐る恐る目を開ける。


そこには、何とも不思議な光景が広がっていた。


「なん……で……………」


目の前のドラゴンは私を食べる事なく、


何故か私の身体を囲む様にして側に座っていた。


まるで、身体を温めてくれるかの様に。


「……………………まさか、温めてくれているの…?」


言葉が通じないと分かっていたけれど。


私をジッと見つめるその目が。


まるで私の言葉を理解しているかの様な気にさせた。


(……………そう…なんだ)


「怯えてごめんね。ありがとう…」


「ギュル………?」


手を伸ばすと、私はそう言って優しくその身体に触れてみせた。