「……今朝、ティアンノ卿とその息子が顔を見せに来た。お前との結婚を白紙にしたい、とな」
「……っ!?」


思わず声が出そうになった。


結婚を白紙にしたいと申出たのはこちらからなのに、まるで自分が拒否したかの様な言い方。


「理由はこうだ。『彼女が僕を殺そうと裏で企んでいる事を知ってしまった』と」

「それは違います……っ」


事実無根の言葉に、直ぐさま否定の言葉を入れる。


けれど、否定した所で状況は悪化するだけ。


「……貴様。誰様に向かってその様な口を聞いているのか分かっているのか?」


尊大な態度で、こちらを見下ろす。


私はただの皇女で、相手はこの国の皇帝陛下。


敵う相手ではない事は、始めから分かっていたのに。


「証拠は全てここにある。貴様が企んだとされる"毒殺"について細かくな」


そう言って分厚い書類の束を掲げる。


気味の悪い視線を感じ、咄嗟に大臣達の並ぶ列へと視線を向けると、そこには昨日ケレイブ様と一緒に部屋にいた男がいた。


(まさか……)


その男は不気味に笑った。


彼らの仲間(グル)だ。