「……………な…っ…。何ですって……」


思わずその言葉に、一瞬だけ頭の中が真っ白になる。


退屈されていたお妃様に喜んで頂こうとして、連れてきたと言うこの場所。


室内でエステを行おうとした時に窓から現れた怪しい男達に、


お妃様は連れ去られた………なんて。


「何と言う失態…………。テオビューク様は外に?」


「中へ入る事は禁止され、ドアの前で待機していた。この様な事になるとは………」


己の悔しさからか。その表情は怒りに変わる。


「……それで貴女はどうする事も出来ずに、ただこの場で泣いていた。そうゆう事ですか?」


「…………っ…!」


思わずため息をつく。


そもそもこの侍女は何故勝手に、お妃様をここへ連れてきたのか。


そして、よりにもよってこの様な時に限って何故こんな事に。


「……早急に対策を取らねばなりませんね。貴女は起きた事を詳しく説明しなさい」


今ならまだ犯人が王城内にいるかもしれない。


お妃様がさらわれた時点でわたくし共の命など無いと同然だけど。


今は詳しい状況を聞いて探す以外に、恐らく残された道はない。


「………背が高く、細型の若い男でした。五人程でこの部屋に窓から押しかけ、あっと言う間にお妃様を担いで、その窓から出て行きました……。服装は黒くて、顔は覆い隠すように布が巻かれていました」


「………内部の人間が絡んでいる可能性も考えられますね」


「それは何故だ?」


その言葉に聞いていたテオビューク様は反応をする。


「外部の人間がその様な格好で簡単に城内へ侵入出来るとは思えません。中の仕組みを知った者、もしくは怪しまれずに中で動ける人物が恐らく関わっているのかもしれません」