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「キャー…ッ…!!!!」


廊下に女性の悲鳴が響き渡る。


「………………ッ…!」


侍女長であるわたくしは、直ぐ様その悲鳴の聞こえた場所へと向かう。


(ん?この方向は………)


先程。


ルークス執事長にお会いし、報告を終えたわたくしはお妃様の待つ部屋へと向かうと、


待機していた侍女達から、一階にある部屋へ仲間の侍女と一緒に出掛けたと聞かされた。


何故そんな何もない様な所へ向かわれたのか些か疑問ではあったけれど、


取り敢えず教えてもらった部屋へ向かう途中だった。


ふと違和感を感じたのは偶然にも今から向おうとしていた方向であった事だ。


「………ハァ…ハァ…………ッ…」


ドアは既に開いており、中にはお妃様の護衛騎士であるテオビューク様のお姿があった。


近くを見てみると、王妃様となられる際に増員した侍女の一人が酷く取り乱した様子で、頭を抱え泣き叫んでいる。


どうやら近くにいるテオビューク様はその侍女を落ち着かせながらも、どうにかして事情を聞いているといった様な光景だった。


「テオビューク様。一体何があったのですか?」


嫌な予感はしつつも、自分を落ち着かせる様にわざとゆっくり深呼吸しながら二人に近づく。


「……クランベル侍女長」


スッと立ち上がるテオビューク様の表情は普段よりもずっと硬く。


状況の悪さが伺える。