午後二時。


私は先日図書室から持って出た小説を読みながら、侍女が淹れてくれた紅茶を啜っていた。


クランベルは週に一度、執事長ルークスへ報告する事があるみたいで、この場にはいない。


今ここにいるのは、王妃となった時に新しく付いた侍女達だけだ。


殆どクランベルが他の侍女達へ指示を出すので、正直会話らしい話はした事がない。


その為、ちょっとだけ気まずかったりもする……。


「…お妃様」


ティーカップを机に置いて、次のページをめくる。


物語の世界は何だか心地が良い。


「…………お妃様!」


更にページをめくる。
そろそろ良い展開になって来た。


「お妃様!!」


「え!?あ………どうかしたの?」


ハッと現実に戻る。


本から目線を外すと、控えていた侍女がこちらを見ていた。


「読書も宜しいですが、気晴らしにエステルームへ行かれませんか?」


「エステルーム?」


その言葉に、開いていた本を閉じる。


実際にエステというものをした事はないけど、一時期帝国のお義姉様方の間で流行していた。


異国発祥の美容法で、美しく保つ効果があるらしいとか。


実際にどの様な事をするのかは知らないけれど、お義姉様方は確かに美しく見えた気がする。