朝食後。


皆様方の食器を割らないよう丁寧に洗い、かごにいれた。


ちょっと前までは食器洗浄機に任せっきりだったのに。


とは言っても沼口さんにとっては私の存在が食洗機くらい重要らしかった。



「やっぱり2人だと早いわね。もう片付け終わっちゃったわ~」



とたいそう喜ばれた。



「あと少しで出発ですよね?」


「あら、そうね。じゃああたしは身支度して行くわ。分からないことだらけだと思うけどよろしくね~」


「はいっ!精一杯頑張ります」


「あっ、そうそう。これこれ」



沼口さんから渡されたのは体育の先生が首にぶら下げているホイッスルだった。



「狼くんが出たらこれを吹くのよ。そしたら誰かしら助けに来てくれるから」


「まさか私が襲われるわけないですよ。魅力なんてないですし」


「あたしが言うのもなんだが、ときちゃんは清純派美少女よ。誰が食ってもおかしくない」



そんな野蛮な人たちなのだろうか。


なんか急に恐ろしくなってきた。


沼口さんいなくならないで!


と叫びたいところだけど、自ら狼の生息区域に進入しちゃったんだからどうしようもない。



「まあ部屋の鍵はかかるから大丈夫よ。不安なら一番安全なジャスティスのところに行けばいいわ」



...?


ジャスティス?


誰のこと?



「ああ、ジャスティスってのは緑川正義のことよ。まさよしって正義って書くから英語でジャスティス」


「ははは...面白いですね」



謎過ぎるネーミングセンス。


いくらなんでもジャスティスはね...。



「彼はああ見えてマザコンなのよ。あたしみたいな熟女がいいらしいから安全よ」


「ほお」


「じゃあ気をつけてね。あたしも手術頑張るから」