甲斐さんが優しく私の頬に触れた


嫌じゃない


でも…


アノ魔法の手じゃない


「颯太。俺の部屋ってどこ?」


ドキンッ


EVの中に矢野将太郎が消えていく


ハァ…もうやだ


「矢野課長が帰ったんで甲斐さん1人部屋ですよ」

「おっ!ラッキー♪」


ニッコリ微笑んだ甲斐さんの手が私の背中を押した


ビクッ


「じゃあな~」


颯太からキーを受け取って軽く手を上げると


私を先に歩かせながら部屋に向かう


後ろから笑い声が聞こえて…


ドキドキ


甲斐さん?


先ほど飛び出したばかりのドアの前


鍵を開ける彼の手をジッと見てた


ほんの数時間前まではこの手に早く触れて欲しかったのに


今は…


「どうぞ…」


大きく開いたドア


でもこの部屋は…


「奈生ちゃん?」


忘れなきゃ…


ギュッと目をつぶって中に入った


甲斐さんは私の彼氏


こうなる事を望んでいたでしょ?


部屋に入るとすぐに電気がつく


さっきはずっと暗闇で…


無意識で視線を走らせてしまったベッド


メーキングが来たかのようにキレイに戻ってる


まるで何もなかったみたいに