『すみません…』

「…甲斐さん?」

『違います』

「あの人はそんな中途半端な話しないか」


中途半端?


ちょうど信号で停車して


矢野将太郎は身体ごとこちらに向けた


狭い車内で圧迫感を感じてドアに寄ってしまう


「中国は…行かない。アレはお前の元彼が行く」

『颯太!?…嘘』


奈生元彼伝説☆進行中


「ショック?坂本に未練ある?」

『ち、違います!ただ同期だし…行きたがってたの知ってるし』


返事しながら頭の中は混乱してて


海外赴任が本決まりと思ってた人は行かず


強気発言を笑ってた颯太が現実赴任する


「そんなに俺にどこか行ってほしいか?」

『そういう意味じゃ…すみません』


何かすごく睨まれてる気がする


信号が変わってシートに座り直した彼は


さっきより乱暴に発車させた


怒らせた?


さすがに気分悪いよね


「中国よりもっと遠くにそのうち飛んでくよ」

『………』


海外赴任は…本当にあるんだ


そりゃあそうだ


今うちの部署で一番勢いのある人を会社がほっとくわけない


甲斐さんも言ってた


将太郎を日本に置いとくのは宝の持ち腐れだよって