スムーズに発車した車はすぐに都会の慌ただしい流れに乗る


意外に思うほど超安全運転でスマートなハンドルさばきにみとれてしまった


車…好きなのかな?


ちょっと車内を見回すと


シンプルで何もないけど乗り慣れてる感じがした


「観察終了?」


ドキッ


薄暗い中でハスキーな声がして


心臓がまた飛び跳ねた


『…すみません』

「別に。お前車運転すんの?」

『実家に帰った時少し』

「大学から1人暮らしか」

『はい…』


こう言う普通の会話って初めてかも


雨音が激しくて外の音は全く聞こえず


矢野さんのハスキーな声も聞き取りづらいくらい


つい右側に身体が傾く


『北米は左ハンドルだったんじゃないんですか?日本帰って戸惑いません?』

「あぁ~慣れた。ヨーロッパも色々だったし。気にしてたら仕事になんない」


軽く話してるけど海外赴任って大変だよね


環境変わって言葉も違うのに仕事しなきゃだし


単身赴任が多いのわかる気がする


『今度は中国って…』

「ハァッ!誰に聞いた!」


ビクッ


すごい剣幕で怒鳴られた


アッ…そういえばトップシークレットだったっけ