さっきは危なかった~


途中EVに誰も乗って来なかったら


またアノ魔法の餌食になってたかも


いいかげん免疫がついていい頃


気を抜くのは危険だと改めて気合い入れ直す


やむ気配のない真っ黒な雨空を見上げて


吸い込まれていきそうな感覚に不意に恐怖を覚えた


「結城さん」


ドキッ


車を駐車場に取りに行ってた課長が戻ってきた


一緒に行くと言ったら雨の中邪魔だって…


近づくとサッと隣に来て


後部座席を開けてくれたので


素直にお礼を言い乗り込もうとしたら


横から腕をグイッと引っ張られた


「俺はお前のハイヤーか。前に座れ」


バッグとコートを後部座席に投げられ


前のドアを開けて促す


だよね


いくら何でも失礼だよね


ハァ…


助手席に座ると外からドアをバンッと閉められ


その音が耳に反響して焦ってきた


どうしよう


ヤバくない?


別に何かあるとか決めつけてるんじゃなく


動揺を隠せない私がヤバい


「シートベルト」

『アッ!はい』


運転席との距離十数センチ


こんな小さな空間では息苦しくて


乱打する心臓の音も聞こえそうだよ