「アイツに頼んだから。俺は11時頃かも。ごめんな」


待ってますと言おうとしたら思った以上に遅い時間を言われる


「そろそろ行かないと。奈生ちゃん飲み過ぎんなよ。着いたら電話する」

『か、甲斐さん!』


………―


切れちゃった


どうしよう


受話器を握って呆然としてしまう


将太郎と先に行け?


アッハッハッ


冗談キツいよぉ~


「ラブコール終わり?じゃあ出発な」


受話器をサッサと電話に戻し


パソコンの電源を落とす矢野課長


ジャケットとバッグを掴んで


「早くしろ」


例の凍りつく声で促す


反論や意見は聞いてもらえそうにない


ここは気持ちを決めるしかない


って逃げてどうすんだ!


ただ送ってもらうだけじゃん


私もコートとバッグを掴んで追いかける


『すみません。お手数をおかけしますが宜しくお願いします』


超ビジネスライクで押し通そう!


EVに乗ったらこの前のキスを思い出しちゃって


矢野将太郎に背中を向けないように壁に寄り俯く


「なぁ…警戒してんの?」


ビクッ


「そういうのって…逆効果じゃない?」


甲斐さ~ん!