わからないけど無意識に差し出した手


私の手と顔を見比べて何故かちょっと俯いた課長は


「俺の言う事なんか聞かねえし」


自嘲気味に言い捨てると


私が握るタオルを乱暴に引き抜いて


電話を突きつけてきた


『…課長?』

「甲斐さん。お前に替われって」


えっ?


甲斐さんからの電話?


慌てて受け取る私を鼻で笑ってタオルを頭にのせてる矢野将太郎


『甲斐さん?大丈夫ですか?』

「奈生ちゃんごめんね。それがあんまり大丈夫じゃなくてさ」

『えっ?』

「アッ!心配はいらないよ。実はお世話になった方のお通夜が入って今から行かなきゃならないんだ」

『…大変ですね』


お通夜…って事は私は待ってたらいいのかな?


宴会には間に合わないけど仕方ないよね


「奈生ちゃん?聞こえてる?」

『はい。すみません』


颯太に遅れるって電話した方がいいよね


料理って取っといてもらえるのかなぁ?


「それで悪いけど将太郎と一緒に先に行っといて」

『………えっ』


甲斐さん?


「アイツも車で来てるらしいから乗っけてもらって。今からならギリギリ間に合うだろ」


ねぇ…甲斐さん?