指示書を渡す一瞬私を見た瞳も凍りつきそうなほど冷たくて


ゾッとした


矢野将太郎二重人格?


よかった


アレ以上近づかなくて


退社時間を少し回った頃に甲斐さんが戻ってきた


姿を見ただけでホッとしてる私


「奈生ちゃんお待たせ。帰れる?」

『アッ…はい。すぐ用意します』


やっぱり朝の話は夢とかじゃなかったんだ


颯太にあれこれ聞かれても笑ってかわしてる甲斐さん


私の手からコートを取って後ろから着せかけてくれながら


「お疲れさま。みんなも早く帰れよ」


ニッコリ笑顔で背中を押して連れ出された


オフィス内で女の子達の溜息


気持ちわかるよ…


甲斐さん本当に素敵な人だもん


EVで彼を見上げると優しい笑顔を返されてドキドキしちゃうよ


優しい柔らかい雰囲気と落ち着いた声


包み込むような空気を発する大人の男


負けず嫌いな私でも甲斐さんには甘えたくなる


「奈生ちゃん。颯太と付き合ってたって」

『…はい』


会社の側の小料理屋さん


2人でお試し交際宜しくの乾杯をして


やっと実感がわいてくる


「別れて正解だよ!奈生ちゃんには大人の男が合うよ」