わ、笑った


鼻で笑ったんだけど


アノ矢野将太郎が一瞬口角をキュッと上げた


しかも…私を見て


すぐにいつもの冷徹課長に戻ったけど


何だかよくわからないうちにオフィスを後にして


せっかくのイタリアンも味もよくわかんない


ワイングラスを指でなぞって間接照明にキラキラするのを眺めてた


「~ぉ?奈生!」


ハッ


テーブル越しに顔を近づける颯太


『アッ…ごめん。何?』


飛んでた意識を引き戻し作り笑顔をくっつけた


眉をひそめて怪訝そうに私を見つめて急に頭をポンと撫でる


付き合ってた頃もした事ない仕草


「お前疲れすぎ。仕事中毒なるなよ」

『…ぅん。ありがと。ごめんね』


せっかく食事誘ってもつまんない相手だったよね


ちょっと反省


「でも矢野さんにはビックリだよな」

『へっ?』


突然名前が出てこっちがビックリだよ!


颯太は何故かニンマリ


「もっといいもん食うってアレきっと女だよ」


エッ…


えぇぇぇぇぇっ!!


そういう意味?


「冷徹課長も隠れて遊んでんじゃん♪なぁ~」

『…ぅん』


ソレ…私だよ


だからあの時笑ったのか