KANATA~answers of your selection~

心が掻き乱される夜だった。


あの後2人一緒に降りていって父と少し話すと未夢はいつもと変わらぬ笑顔を振り撒いて帰って行った。


その夜オレは寝付けなくてそのまま朝を迎えた。


学校で未夢にあったら何と言おう。


未夢の方がオレより辛いはずだ。


好きな人から拒絶されてしかも同じクラスにいるなんて、オレだったら死ぬほど嫌だ。


開き直って謝るべきか。


何も言わずにこのままやり過ごすべきか。


はあ...。



「かーなたせんぱいっ!」


「うわっ!びっくりした...」


「やったー!ドッキリ大成功!っていうかどうしてそんな顔してるんですか?なんか元気ないですよ、先輩。寝不足ですか?」


「まあな」



よりによって電車が辻村と同じになるとは...。


寝不足のローテンションで辻村と会うなんて最悪だ。


何か勘づかれるかもしれない。


その前に手を打たねば...。



「あっ、あっちの方が空いてる。辻村あっちに行った方がいいぞ」


「何ですか急に」


「最近痴漢が多いらしいしな。なるべく空いてる車両に乗った方がいいよ」



オレがそういうと、辻村は頬を膨らませた。



「奏太先輩、私と一緒にいるのがそんな嫌ですか?」


「別にそういうことじゃなくて、ただ本当に心配で」


「心配には及びません。私、痴漢されるほどナイスバデーじゃないんで」



...ナイスバデー?


ナイスバディ、だよな?



「ハッハッハ!なんだよ、バデーって!ハッハッハッハッハ!おもしれえ」



こんなに笑えるのは久しぶりだ。


こんなに笑えるような内容じゃないのに、大声で笑った。


今まで忘れていた感情が呼び覚まされたみたいだ。


サラリーマンに睨まれ、目の前で電車を待っていたおばあちゃんには去られた。


お腹を抱えてホームで笑うやつなんかいないよな、普通。



「これが奏太先輩の本当の姿ですか?」


「は、はあ?」


「オレは全て失ったって。失ってなんかないじゃないですか!最高の笑顔ですよ!やったー!私、奏太先輩の最高級スマイルゲッチュー」


「今度はゲッチューかよ。お願いだ、これ以上笑わせないでくれ」


「いやいやぁ、そんな訳にはいきませんよ。せっかく奏太先輩を笑わせられたんですから、これからも笑わせますよー」



辻村...。


どうして君はここにいる?


どうして君はオレの太陽になってくれるんだ?


どうしてオレなんだ?


どうして君は...


どうして君は...


オレが好きなんだ?


どうしてオレは君を...