KANATA~answers of your selection~

家に残ったのは宙太さんとその息子の星矢、母さん、オレの4人。


こうなったらもう話すのは宙太さんしかいない。



「よーし、じゃあ優秀な我が息子と奏太にパラレルワールドについて語ろうじゃないか!」



出た出た。


やっぱりこの話題か。


この場に良がいたら恐らくテンションは爆上げだっただろう。


オレも興味がないわけではないが、そもそもそういうものを信じてないから現実味がなくて面白くもなんともない。



「じゃあ、最近の研究結果から」


「奏太くんごめん。また熱弁ふるって長くなるかも」


「大丈夫。心配しないで」



下2人とは違って星矢は優しいし、大人しく勉強も得意である。


黙々と研究を進めるタイプだとオレは見ている。


父の話を真面目に聞くのも恐らく星矢だけだろう。



「俺の大学では今、臨床試験を行っている。内容としては無作為に選んだ被験者に特殊な睡眠薬を飲んで3日間眠ってもらい、夢の中で多数のパラレルワールドを移動してもらい、そこにいる自分と会ってもらう。現実でのワープはまだ実験段階だけど、これはまずまず成功していて夢の中で会ってもう一人の自分が事故に遭っていたから気をつけるようにしたらXデーを免れられたという報告もある」



夢の中で会う、か。


それってただ夢の中に自分が出てくるだけじゃないのか。


そして同じような世界で同じような人が生活しているからそう思い込んでしまう。


現実的なオレはそう考えた。



「なかなか信じてもらえないようだけど。な、奏太」


「ふあ?」


「疑いの目で見ているようだな、君は」


「そりゃそうですよ。会うのが夢の中だからまして。研究員が脳波を操作して深層に眠っている記憶の改ざんをして被験者に見せているっていう可能性も考えられますからね」


「そこまで言うなら、今度うちの大学に来ると良い。研究施設を見せてあげよう」



うわ、最悪だ。


マインドコントロールしようとしている。


この人、ヤバい人だな、相当。



「宙太くん、奏太を実験台にしないで。受験勉強もあるし、大事な時期だから」


「ほ~、あおはるも立派に母親になったなあ。なら、奏太の代わりにお前がやるか?会いたいやついるんだろ?」


「冗談言わないで。研究のこと話してもいいけど子供達を巻き込まないで。確かにあるのは...今なんだから。今しかないんだから」



母がこんなに取り乱すのは久しぶりだ。


そう、祖父が急死したあの夏の日以来だ。


ていうか、会いたいやつって誰だよ?


母さんが今と違う世界を望むことってあるのか。



「今しかない...そんな時代は終わった。今の時代はな、未来にも過去にも行けてそこで自分と同じ人間が異なる時間軸でいきてんだよ。だから当然、違う選択をしてることもある。つまり星矢も奏太も、俺たち自身だって存在しない世界も...」