KANATA~answers of your selection~

オレは駆け出した。


辻村の様子が明らかにおかしかった。


手が震えてボールが地面に落下し、辻村が倒れそうになり、オレがぎりぎり押さえた。


辻村の見た目通りかかる重さは軽く、今にも折れそうな手首で、体も冷えきっていた。



「辻村大丈夫?どこか悪いのか」


「悪いのは...頭だけ。だから...大丈夫です」



痛みをこらえるかのようにオレのブレザーにしがみついていた。


体が冷たかったからオレは辻村を包み込んだ。


虹晴以外の女子に触れることも抱くことも今までなく、全く初めてのことだった。


オレも困惑したが、こうしていれば温まるし、辻村も安心するだろうなと思った。



「奏太先輩...私......本当に好き...なんです。だから、こんなことされたら......余計好きになっちゃいます。反則ですよ」



オレのことが好き...。


そんな人は今までにも何人かいた。


でもオレは誰にも興味が無かった。


物心ついた時からわりとそうで、未夢といるからクラスの中心にいられたようなもので、オレ自身が輝いてなんかいなかった。


照らされて光ってただけなんだ。


そんなオレを、


嫌なことから逃げ出したオレを、


好きになっちゃ...ダメだ。


申し訳ない。


こんな男を選ぶ必要ない。



「辻村、落ち着いたら帰ろうか」


「はい。でも、賭けのリベンジは近々させて下さい。今度は絶対入れます」