KANATA~answers of your selection~

オレはその日のうちに辻村の主治医に会うことが出来た。



「阿部奏太くんだね。とりあえず一度検査をしたいから明日にでもまた来てくれるかな?書類も揃えておくよ」


「あっ、はい。ありがとうございます」



この人、どっかで見たことあるような気がする。


なんなら、つい最近会ったような気もしないでもない。


しかし、オレは3日も眠っていたんだ。


人に会うことはなかったんだ。


いや......そんなことない。


オレは夢の中で人と会っていた。


だったらこの人は...夢の中で会ったのか?


一体いつ、どの世界で会っていたんだ?


思い出せそうで思い出せない。


こうなったら直接聞くしかない。



「あの...こんなこと聞くのは失礼かもしれないんですけど...その...どこかでお会いしませんでしたか?」



先生が首を捻る。



「いや、会ったことないと思うよ」


「そうですよね。変なこと聞いてしまってすみません」


「いえいえ」



この微笑みもどこか懐かしい。


会ったことのない人に親近感を覚えるなんてオレどうかしている。


ちゃんと事後検査するべきだったのかもしれない。


とはいえ、辻村を助けられたのだから良かったんだ。


ちょっとくらいオレの脳がおかしくなろうと、悲劇を繰り返さずに済んだのだから良かったんだ。


そう、良かったんだよ。


良かった...。


助けられて、


守ることができて、


良かった。


まさか、このタイミングで涙が出てくるなんて。


先生に変な人だと勘違いされてしまう。


ああ、でも止まらない。


止められない。


こんなとこで泣くなんて...カッコ悪すぎる。



「奏太くん、良く頑張ったね。辻村さんを助けてくれてありがとう。ぼくからもお礼を言うよ。本当にありがとう」


「いや...。そんなこと言われたら益々泣けて来ますよ。止めて下さい」



先生が愉快に笑う。


こんなに笑顔が似合う医者にオレは初めて会った。


先生の笑顔を見ていたら、オレはなぜか涙が止めどなく流れてきた。


先生が安心させてくれたんだ。


オレはこの人の前で泣いていいんだ。


そう思えた。



「泣きたい時は泣けばいい。思いっきり泣いていいんだよ」



オレは先生の胸で泣いた。


オレよりも小柄なくせに包容力だけはあって、オレは辻村に負けないくらい泣けた。



「誰かの弱さは誰かが包めばいい。誰かが自分を見失いそうになったら、ここにいるって言って抱き締めればいい。悲しみは両手を重ねて分けあえばいい。そうやって感情を調節して人は生きていけばいい。ぼくはそう思うよ...」