「辻村はオレの1番大切なやつだった。小学生の時対戦したあの日、オレは女相手に手加減しないでアイツを怪我させた。それからアイツはチームを抜け、中学に上がるまでバスケをしなかった。続けていればバスケ推薦どころかプロになれるくらいにまで上達していたはずなのに、オレはアイツの才能を台無しにしてしまった。それなのにオレと再会するや否や、ずっと会いたかったんですとか言ってきて。でも辻村は女バスには入らないで男バスのマネージャーをしてくれた。オレは健気に頑張るアイツが好きになった。でも...気付けなかった。アイツが...病気だってこと...」
病気...。
オレはその言葉に頭を抱えた。
その先を聞きたくなかった。
「辻村は白血病だったんだ。だけど、骨髄移植さえすれば転移もしてないし治るかもしれなかった。ただ1番可能性がある家族で試しても合わなかった。それで希望をなくし、弱っていく自分の姿にうんざりし、辻村は......自ら命を絶った。辻村の16回目の誕生日に」
誕生日...。
辻村の誕生日なんて知らなかった。
何もかも分かったようなふりして何も分かっていなかった。
辻村が1人で背負い込んでいることも、
辻村が自分の運命を否定的に考えていることも、
何も...
オレは何も...
知らなかったんだ。
辻村の近くにいたはずなのに、
辻村とたくさん話したはずなのに、
辻村と何度もぶつかったはずなのに、
辻村に何度も抱きしめられたはずなのに、
辻村に何度も好きって言われたはずなのに、
オレは...
オレは...
何も知ろうとしなかった。
辻村の言葉も、辻村自身も
信じているつもりで、
何も信じられていなかったんだ。
「奏太、今ならまだ間に合う。8月10日午後2時14分に辻村は飛び降りる。だからそれまでになんとか...なんとか辻村を...」
「分かってる」
「奏太...」
迷いなどない。
オレの選択はただ一択だ。
「辻村夏向を必ず助ける。絶対に死なせない。オレの命に変えても」
オレはぎゅうっと目を瞑った。
早く辻村のところに行きたかった。
辻村に会いたかった。
「奏太、辻村の入院している病院は青葉大学付属病院だ。よろしく頼む」
眠りにつく前にオレは阿部奏太の左手を握った。
「左利きだろ?」
「ああ...」
「この手で救うからな」
じゃあな。
ありがとう...。
阿部奏太。
病気...。
オレはその言葉に頭を抱えた。
その先を聞きたくなかった。
「辻村は白血病だったんだ。だけど、骨髄移植さえすれば転移もしてないし治るかもしれなかった。ただ1番可能性がある家族で試しても合わなかった。それで希望をなくし、弱っていく自分の姿にうんざりし、辻村は......自ら命を絶った。辻村の16回目の誕生日に」
誕生日...。
辻村の誕生日なんて知らなかった。
何もかも分かったようなふりして何も分かっていなかった。
辻村が1人で背負い込んでいることも、
辻村が自分の運命を否定的に考えていることも、
何も...
オレは何も...
知らなかったんだ。
辻村の近くにいたはずなのに、
辻村とたくさん話したはずなのに、
辻村と何度もぶつかったはずなのに、
辻村に何度も抱きしめられたはずなのに、
辻村に何度も好きって言われたはずなのに、
オレは...
オレは...
何も知ろうとしなかった。
辻村の言葉も、辻村自身も
信じているつもりで、
何も信じられていなかったんだ。
「奏太、今ならまだ間に合う。8月10日午後2時14分に辻村は飛び降りる。だからそれまでになんとか...なんとか辻村を...」
「分かってる」
「奏太...」
迷いなどない。
オレの選択はただ一択だ。
「辻村夏向を必ず助ける。絶対に死なせない。オレの命に変えても」
オレはぎゅうっと目を瞑った。
早く辻村のところに行きたかった。
辻村に会いたかった。
「奏太、辻村の入院している病院は青葉大学付属病院だ。よろしく頼む」
眠りにつく前にオレは阿部奏太の左手を握った。
「左利きだろ?」
「ああ...」
「この手で救うからな」
じゃあな。
ありがとう...。
阿部奏太。



