KANATA~answers of your selection~

背中の痛みと暑さでオレは目を覚ました。


オレはなぜかアスファルトに寝転がっていた。


意識が朦朧としている。


これはもしかして最後の世界かもしれない。


最初と同じく痛む頭を抑えながらなんとか立ち上がると、表札が目に飛び込んできた。


ここ...


オレの家だ。


外観が一緒だからこの世界のオレは同じ家に住んでいる可能性が高い。


顔も変わらないはずだから、顔認証も恐らくパス出来るはずだ。


ドアの前に立ち、浮かび上がる鏡に顔を映す。


―――ガチャ。


ドアが開いた。


中に入っても物音1つ聞こえない。


今、この家には誰もいないんだ。


良かったと安心する一方で、最後の世界で何も得られずに終わるのが悔しかった。


部屋の配置とか使い方とか、ほぼオレの家と変わらない。


ひとまずリビングに入り、定位置に飾ってあるカレンダーを目にする。


日付はオレの生きる世界の10年後の8月9日になっていた。


こんなところにいると、別世界というよりは未来にタイムスリップしてきたかのように感じる。


3日も帰っていない家が懐かしくなり、オレは1階から順に1部屋ずつ巡った。


玄関にもう一度足を運び、靴箱を見るとオレと虹晴のものが一足もなかった。


オレは28、虹晴は24だ。


1人暮らしをしているのかもしれない。


この家にいる方が問題のような気もする。


ニートになってなくて良かった。


ひとまず安心だ。


とはいえ、オレがこれからこの道を歩むとは限らない。


こうなれるよう、律して生活しなくては。


キッチンに来て冷蔵庫の中身をチェックしてみる。


卵は6つパックだし、タッパーに入っている肉じゃがも父の今晩の分しかない。


母は55になっても夜勤を頑張っているのか。


そんな母だから、オレは母が間違っても許すことが出来る。


頑張らないで、努力しないで現状維持を望む人には選択肢はない。


努力して進んでいるからこそ、分岐点が表れ、そこで選択をするんだ。


そこでどんな選択をしようと、間違っていようと努力したことは確かだ。


オレは選択を続けて必死に生きようとする母を恨んだり、憎んだりはしない。


オレが見たように過去に過ちをおかしていたとしても、そんな母もオレの母なんだから、オレは受け入れる。


なんて全部悟ったような顔してかっこつけているけど、こんなことを感じたのも、思ったのも、考えたのも、こうしていくつもパラレルワールドを歩いて来てからだ。


今だから分かる。


今だから感謝できる。


オレの周りの全ての人を。