KANATA~answers of your selection~

実験台に乗せられてから何日経ったのだろう。


こちらの意識がはっきりしているということはまだ残り日数はあるはずだ。


オレが次に目覚めたのは見覚えのある体育館だった。



「カナタ、頼む!」


「おう!」



オレは倉庫から小学生のカナタの活躍を見ていた。


地元のジュニアバスケットボールチームに所属していたオレは月水金は午後7時から9時まで小学校の体育館で練習し、土日は朝から晩までバスケ漬けだった。


人数が少ないし、コーチもいないからきっと自主練習だろう。


この世界のカナタもバスケが好きなようで生き生きとプレーしている。



「カナタ~!お弁当持ってきたよ~!」



体育館脇の出入口から大声を挙げてやって来たのは未夢だった。


ということはわりとこの世界はオレの過去に近い。


この世界は長くいた方が情報が掴めそうだ。



「また来たぞ、お前のカノジョ」


「未夢はカノジョじゃない。幼なじみだ」


「はてえ、本当にそうなのかなあ」


「っるせえ、本当にそうだっつうの」



あの人はオレの2つ上の先輩だ。


いつもちょっかいを出して来て何かとうざい人だったが、この人はバスケが上手くて確か大学でもバスケやってるって言ってたな。


昔はこんな感じだったんだ。


すっかり忘れてた。



「カナタのママ大変なのにいっつも弁当作ってくれるなんて優しすぎるよ。家のママなんか、専業主婦のくせに弁当は冷凍食品ばっかでさ。それに昨日の夕食なんて...」



どうやら完全に過去ではないらしい。


未夢の母は料理研究家だ。


冷凍食品ばかりのお弁当などあり得ない。


まさかそんな違いもあるなんて思いもしなかった。


やっぱり、この阿部奏太はオレしかいないんだ。


同じ魂でも、オレはオレだけなんだ。


皆違う世界で阿部奏太を生きているんだ。


オレは改めて今ここにいる自分を大切にしたいと思った。



「未夢の話はそこまで。それよりもっと面白い話があるんだけど、君たち聞く気あるかい?」


「えっ?なになにい?」


「この地区にかなたっていう子が住んでる。その子もバスケやってるみたいで、別のチームで男の中に混じって活動してるみたい」


「だからなんだよ」


「その子たちのチームと俺達来月戦うらしい。昨日コーチから聞いた」



来月...か。


これでは確認出来ないじゃないか。


オレの期限は3日しかないのに。


とりあえず何事もなければ、オレと辻村は来月に会って対戦する。


会ってたんだ、オレたち。


いや、でも対戦してたら名前を覚えているはずだ。


ましてや、オレと同じ名前なんて、早々いないし、忘れるわけがない。


んー。


謎は謎を呼ぶな。


確かめようもないし、また寝るとするか。


バスケットボールのゴムっぽい匂いと汗が滲んで異臭を放っているユニフォームの臭いに包まれながらオレは再び目を閉じた。