喫茶店を出ると、日がすっかり落ちていた。


「秋保」


それぞれの帰路につこうとすると、私はこっそり紅羽さんに呼ばれた。


「翔和たちのことで、少し話がある」


私は瑠衣たちから少し離れた。


「春木君たちがどうかしたんですか?」


紅羽さんはとても話しづらそうにする。


「昔の話だから気にしなくてもいいと思ったんだが、一応伝えておくべきなんじゃないかとも思ってな……その……」


はっきりとものを言う紅羽さんらしくなかった。


それだけ濁すということは、春木君には別に好きな人がいるとか、そういうことではと予想してしまうのは、ずっと恋バナをしていたからだろう。


でも、紅羽さんは春木君たち、と言った。
つまり、三人の話。
色恋の話ではないのだろう。


「翔和、翠、しゅうの三人は、中学時代、よく喧嘩をしていてな。噂になるほどの不良だったんだ」


紅羽さんが意を決して言ってくれたのはいいけど、そんなことかと思った。


私たちが通っているのは、不良校に近いところだ。
そんなことでは驚かない。


「あのとき美桜が、秋保が傷付くかどうかをかなり気にしていたから言えなかったんだが……翔和たちといると、秋保は過去の喧嘩に巻き込まれるかもしれない」


……それは予想外です、紅羽さん。