君 色。 <短>





使い慣れた定期で、ため息ひとつ落としながら改札をくぐる。

自分でも、周りから見てもわかるくらいの気だるい足取りで。



他人の笑い声。

すれ違いざまに触れ合う肩。


こんな疲れた躯には、やけに響いてちょっと痛い。



体を丸めた私は、乗り慣れた列車に乗り込むためにホームに立つ。



はぁ……


何かできそうで

なんにもできない。


最近はそんなことばっかりだ。



疲れた体に響く、タイヤの擦れた音と共に、

髪を揺らしながら時間を裂くようなスピードで通り過ぎていく電車。


長く伸びた髪を器用にかきわけて、そっと指先を右耳に触れさせる。


髪が揺れる、そんな時には、いつも無意識に手が伸びてしまうのだ。



私の右耳には、ピアスの穴が独りぼっちで開いている。


どうして片方だけなの?

そう聞かれるのが嫌で、透明な飾り。


じゃあ閉じればいいのに……

そう思うけど、それはできない。



それから、電車が通り過ぎる度に、向かい側のホームへ、ついつい目を泳がせてしまう。



今だに抜けない……

……哀れな癖。