そのせいで、体はまったく動かず、胸の前で両手をギュッと握ることしかできなかった。
うしろに倒れたのに痛くないのは、どうやらたっくんが手で私の頭を支えてくれているからみたい。
変な空気が流れる。
こ、これって、もしかして……。
すると、たっくんの顔がさらに近づいてきて……私は、流れに身を任せ、目をつぶった。
けど、たっくんの唇が当たったのは私の鼻で……思わず、目を開けてしまった。
至近距離で合う目と目。
まさかの鼻チューに、私もたっくんも緊張が一気に解け、「ふふっ」とふたりして笑いが込み上げてきた。
「さゆ、大丈夫?」
私の腕を引っ張り、起き上がらせてくれるたっくん。
「うん。ありがとう」
恋愛初心者同士の私たちは、自分たちのペースで進んでいけたらいいね。
たっくんの温かい手を握りながら、そう思った。



