私だけのヒーロー




「さゆ、ちょっと入るわよー」



そう言って入ってきたのはお母さんで、ドアから顔だけ出して、ゆっくりと部屋を見渡し始めた。



「うん。部屋はきれいだから大丈夫よね。体調はどう?」

「体調? 寝たらだいぶ良くなったけど……部屋は大丈夫って何で?」

「拓海くんがわざわざお見舞いに来てくれたのよ」



お母さんはそれだけ言って、後ろから突然登場したたっくんを、私の許可なく部屋に入れた。



縮毛矯正が取れかけている天パの地毛に、すっぴんにパジャマ姿。



今の私は、見せられる状態ではまったくない。



かといって、わざわざ家までお見舞いに来てくれたたっくんを送り返せるほどの度胸は持ち合わせておらず、とりあえず、たっくんには部屋に入ってもらった。



掛け布団を鼻まで被り、なるべくすっぴんパジャマ姿を見られないようにした。



たっくんは、部屋の真ん中に置いてあるローテーブルの近くに私の方を向いて座った。



「体調はどう?」

「とりあえず、熱は下がったよ」



そこから会話が続くことはなく気まずい時間が流れ、たっくんが沈黙を破った。



「何で布団で顔隠すの?」

「それは……すっぴんだし、パジャマだし、髪の毛も何もしてないから」

「気にしないのに。髪の毛も……くるくるなの可愛いと思うよ」

「この天パ?」

「うん」

「可愛いなんて初めて言われた。いつも、この髪の毛のせいでバカにされてたから」



たっくんは相変わらず優しい。

だから、素を見せてもいいんじゃないかって思ってしまう。