幼小中高と一緒だけど、たっくんがあまりしゃべるタイプじゃないから、正直そこまで話したことがない。
笑っているところも滅多に見ないし、なにを考えているのかまったく分からないし、まさに無気力男子とはたっくんのことだと思う。
だから、こうして助けてくれたことにとても驚いている。
たまたま教室に入ってきたところだったのかな?
そりゃ、目の前で人が頭打ってのたうち回るところなんか見たくないもんね。
だから、助けてくれたんだろうな。
自分の中でなんとか解決し、座席表を見て自分の席へと座った。
「あのー、ここ、私の席だと思うんだけど…………」
その声に反応して横を見ると、綺麗な長い黒髪の女の子が困った顔をして立っていた。
「えっ、あっ、ごめんね!ここ、あ!ほんとだ!私ひとつ後ろだった!ごめんね!」
「ううん、大丈夫だよー」
「今、移動するね!」
カバンを持ち上げ、ひとつ後ろの席へ行こうとした瞬間、手がすべり、カバンの中身が床へと散らばった。
どうやら、カバンのチャックを閉め忘れたらしい。
周りからの視線を一気に感じる。
恥ずかしさを押し殺して、黙々と散らばった私物をカバンへと押し込む。
自分のドジさには本当に呆れる。
ため息をするのすら怖くて、小さく深呼吸をした。
すると、黒髪の女の子がその場でしゃがみ、拾うのを手伝ってくれた。
「ごめんね、大丈夫だよっ」
「なんで? 2人でやった方が早く終わるじゃん」
女の子はそう言って、テキパキと私のカバンへしまってくれた。