俺は妹が所望するプレゼントを聞いて、暫く考えて、近くの駐車場に車を入れた。

「確認するけど、それ真面目に言ってんの?」
「おう」

妹はぐっと親指を立ててみせた。
俺は項垂れるようにシートに凭れる。

「今日じゃなきゃ駄目?」
「勿論」

妹の意思は固いみたいだ。

「今ってね、幸せの絶頂期だと思うんだ。だから私は幸せの中で死にたい、だからね」

妹はにこにこと顔を綻ばせながら、胸のうちを晒した。

「殺して欲しいんだ、お兄ちゃんに」

俺が普通の兄貴だったら、怒って怒鳴るなり笑って流すなりするんだろうな。
でも俺。

「わかった。いいよ、小梅」

俺は懐から小型のナイフを取り出す。
妹は目を細めて笑った。

「知ってたよ、お兄ちゃんが私のこと殺したいくらい嫌いで同じくらい愛してくれてること」