理恵は一人屋上にいた。
この仕事をしていると悲しいケースもたくさんある。
気持ちの切り替えがつかないこともたくさんある。

ずっと不妊治療してきた患者がやっと妊娠して最近出産したばかりだったのに、事故で亡くなったと連絡が入った。

子供が生まれてはじめてのクリスマスだと一か月検診で会った時楽しみにしていた患者。

理恵は空を見上げながら深呼吸を繰り返した。

「理恵」
「・・・」
その時、あたたかいぬくもりに包まれて理恵は後ろを振り返った。
そこには朝陽が立っていた。
”大丈夫?”なんて言葉は言わない。大丈夫じゃなことはわかっている。
理恵に大丈夫かと聞けば大丈夫じゃなくても大丈夫というに決まっている。

こんな時は言葉はないままただ寄り添ってくれる。